ペア~黒色のヒガンバナ~


【キャラクター紹介】

エクサル

:ブリンガー:エクサル
:絶望「偽りだった」 願い「世界を再誕させる」

:基幹世界人で、隣人を研究対象としているフィロソフィア大学所属の研究者です。22歳・男性。

:身内と己の研究以外の事には基本無関心無愛想。反面、大事なもののためならば己が身を危険に晒すことも厭いません。

:父親も名のある研究者でしたが、母親と研究仲間により研究結果を奪われた上、学会を追われました。父親は失意の内に死去、残されたのは妹と自分だけ。己を取り巻く幸せな世界は偽りだったと知りました。

:その妹も不治の病に冒されており、彼女の治療法を求め、そして父の汚名を濯ぐために研究を続けていますが、内心それも無意味なものであるとも考えており、心の奥底では絶望から世界の破壊と創造、すなわち「世界の再誕」を望んでいました。

:そんな折、研究の被検体であるセレニティスと出逢い、なんの気まぐれか、彼女と対話するうちに己の抱いていた願いを零し、共にステラナイトとなりました。

:セレニティスの事は、「願いを叶えるための道具」として扱っています。現状は。
:また、ステラバトルは今回初めて。

「……N-0308、あれの言うことは理解に苦しむ。しかし、私と願いを共にするというのなら、利用するだけだ」 


セレニティス

:セレニティス 黒のヒガンバナ
:希望「無限の愛」 願い「世界を再誕させる」

:エクサルさんのシース、薄暗き森の世界からやってきた長命な人外少女です(いわゆるエルフ)

:彼女の世界はロアテラの侵攻によって既に滅びており、偶然にも生き残ったセレニティスは基幹世界へと流れつきました。
:そこでフィロソフィア大学に研究対象として保護され、今はエクサルさんの個人研究室に収容されています。

:彼女自身は自分の境遇や現在の状況についてさして不満はありません。ポジティブにゆるふわです(頭が)

:むしろエクサルさんが聞かせてくれるお話やくれるお菓子に興味津々で、エクサルさんはじめこの世界のことをもっと知りたいな~と呑気に思っています。

:願いを共有した理由については、実は互いによくわかっていないようです。
セレニティスはただ、「エクサルさんにとって良き世界で在ればいい」それだけを願っています。

:彼が抱える複雑な気持ちや絶望を、理解はできなくても「感じて」おり、そんな彼に笑ってほしいと、幸せになってほしいと、そんなことを想いながら、研究室でエクサルさんがやってくるのいつも楽しみにしています。

:大丈夫、わたしが側にいるわ。
わたしの愛で、あなたの願いを叶えてみせる。

「“セレニティス”という名前はね、“悪しきものを祓い優しさをもたらす”って意味があるの」

「だからきっと、あなたの世界は光で満たされるわ。わたしの愛は、あなたを幸せにするためにあるの!」

 

 



【第一章】

エクサル

:フィロソフィア大学。その研究棟に、エクサルの宛がわれた研究室はある。

:夜の帳も下り、星々の輝く時間帯。
:日中はドローンの駆動音や得体の知れない爆発音などで騒がしいこの場所も、この時間にもなれば幾らか人気が減って静かになる。

:そんな頃合いに、彼女――シースの元を訪れるのは、ここ暫くの日課になっていた。

:研究室の扉の前に立ち、ドアノブに手をかける。が、直前で止まった。

「……」拳を握り、強めにノック。「入るぞ」


セレニティス

……あ」と、声を上げて、ベットに寝転んでいた体を飛び起こす。

「エクサル!」扉の前に駆け寄ります。


エクサル

:声が返ってくるのを待ち、扉を開ける。

「起きていたか。今日は、何か変わったことはあったか」中に入り、ベッドの傍らの椅子へと歩みを進めながら。

(駆け寄ってきたのは敢えてスルーしています)


セレニティス

「う~うん。全然! つまらない日だったわ」ぴょこぴょこエクサルさんのあとをついていく。


エクサル

「それでいい。お前には、何事もなく無事でいて貰わなければならない」


セレニティス

「でも、エクサルが来てくれたから! 今日は良い日ね!」にこっとします。


エクサル

……その理論だと、大概は良い日になるだろう」椅子に腰を下ろした後、思い出したようにポケットから掌に収まる小さい瓶を取り出して、セレニティスの方に投げる。


セレニティス

「え、わ……!」と、ふわりと宙を漂うように移動して瓶を慌てて受け取ります。 

「わあ…! なにこれ? すごくきらきらしてて、“お星様”みたいだわ……!」瓶の中のものを見て顔を輝かせました


エクサル

:瓶の中には色とりどりの金平糖が収まっている。

「便利なものだな、お前のそれは。金平糖という、甘い菓子だ。
 ……女子供というのは、そういうものが好きだと聞いた。お前も同じか」


セレニティス

「こんぺいとう……? お菓子なのね?」一層にこにこと。

「こんな綺麗なものがお菓子だなんて、この世界は素敵だわ!」そう言って蓋を開けて金平糖を手の平に載せる。


エクサル

……お前の素敵は、簡単に出てくるものだな。今日食べるのなら、眠る前に歯は磨いておけ」

「星……そういえば、もうすぐ流星群だったか」窓の方を見る。


セレニティス

りゅーせいぐん? それもお星様の仲間なの?」彼女も窓の方を見ます。


エクサル

「お前の世界にはなかったのか?

 ……あの空の星が流れ落ちるのを、流星という。流星群の日には、無数の星が落ちるんだ」窓の外を指し示す。


セレニティス

:エクサルさんの言葉にへぇ~と感心し、
「わたしの世界では、そういったことは誰も気にしなかったの」そう答え、しばらく考えたあと金平糖を瓶の中に戻します。

「これは今食べてしまうのはもったいないから、飾っておくわ」


エクサル

「お前に与えたものだ、お前の好きにするといい。この部屋の中であれば、お前の自由は保証する」


セレニティス

「……ねえ、エクサル?」

「その流星群というの、わたしもよく見てみたい!」少女の眼は期待に満ち溢れています。


エクサル

:名を呼ばれて、窓からセレニティスへと視線を戻し、――眉間にしわを刻んだ。

「……この窓からでも、十分に見えるだろう」一旦は渋る。


セレニティス

「ええ、このお部屋の窓からでも見えるわ。でもね」 

「あなたと一緒に、外で、夜空を見上げたいの。その方が、きっと“綺麗”に見える」


エクサル

「お前の言うことは、たまに――いや、大体が理解し難いな」

:己の眉間を指先で軽く叩いて思案の素振りを見せる。

……流星群は、丁度ステラバトルの行われる日だ。どちらにせよ、その日はお前も外に出る必要があるだろう」


セレニティス

「そうなのね! やったわ!」無邪気に喜んで、

「でも、そのステラバトルっていうの、わたし実はまだよくわからないの……。夢の中で、女神さまのお告げを聞いたのはちゃんと覚えているんだけど」


エクサル

:無邪気な様子を見て、溜息を一つ。

「私も初めてではあるが。今回は要するに、エクリプスという存在――敵に支配されたステラナイトだったか、それを討てばいい。戦うのは私なのだから、お前はさして気にする必要もない。勝てば、勝ち続ければ願いがかなえられる。それだけだ


セレニティス

:ふむふむと話を聞いて。

「そうだったわ、願いを叶えるのよね? わたしとあなたの願いを!


エクサル

……そうなる。未だに、“お前の”というところに疑問はあるが」


セレニティス

「戦うのがあなたで、わたしはあなたの“武器”になる。それってつまり、あなたの役に立てるのね?


エクサル

「ああ、そうだ。そのために、お前には五体満足でいて貰わなければならない。……外出も、メンタル面の安定のためと思えば安いか


セレニティス

「ふふ、流星群もステラバトルも楽しみね!」なんて呑気なものです。


エクサル

「流星群とステラバトルを同列の楽しみに扱われては、敵も複雑だろうな


セレニティス

:そしてふと、

……? エクサルの願いはわたしの願いよ、なにかおかしいかしら?」不思議そうに


エクサル

……。おかしいかは個人の価値観だ。ただ、お前は別に、この世界を特別厭っているわけでもないだろう。私と逢ってから日も浅い。今の境遇を嫌うならばまだわかるが、私の願いに同調するのは理解し難い、と言っている


セレニティス

:やはり不思議そうですが、エクサルさんの正面に回りこんで、しっかり目を見つめます。

「…あのね。わたし、無知だから知らないことがたくさんあるけど」 

「この世界に流れ着いて。ここに連れてこられて。わたしのこと、変な目で見る人がいっぱいいることは知ってる」

「だけどあなたは。そうじゃなかった。わたしのことを……“対等”に見てくれたわ」――それは利用価値としてかもしれないけど


エクサル

:回り込んで来たセレニティスから一度は視線を外すが、続く言葉を聞いて視線を戻す。やはり、眉根は寄っているが。


セレニティス

「あなたは他の人たちと違って、わたしにいろんなことを教えてくれる。奇異の目で見ないでくれる。わたしはそんなあなたが好きよ」

「だからあなたと一緒に願いを叶える。……だめ?」


エクサル

「……お前と話をしたのは、気まぐれだ。その偶然に運よくお前が引っかかって、パートナーになったという切っ掛けを持って、"対等"になった」自分の口から出る非論理的な言葉に、眉間の皺が深まる。

「お前に限らず、隣人を奇異の目で見る必要はないだろう。異世界の文化は我々の情報となり、或いは力となり得る。私は私の目的でお前に接しているだけだ

……………お前の意思はお前のものだ。好きにしろ」暫し押し黙った後、短く口にした。

「全く。無駄話をした。そろそろ時間も遅いだろう。今日はもう休め」


セレニティス

……ありがとう、エクサル」珍しく含みのある微笑み。
「理由はなんだっていいの。ねえ
……これからも、側においてね?」彼の腕にそっと触れ、寄り添うように。


エクサル

……当然だろう。お前は私と、運命を共にしなければならない」彼女を振り払うことはない。自ら伸ばすことも、今はしないが。


セレニティス

「あなたの幸せを、わたしはいつも願っているから――」


エクサル

:後は何も応えず、暫くは、彼女のしたいように。
:そうして眠りにつくのを待ってから研究室を後にするだろう。
:扉を閉めるその時は、眠りを妨げぬよう静かに。 

 

「良い夢を」

 

 



【第二章】

エクサル

:昼下がり、フィロソフィア大学構内。
:ステラバトルを目前に控えた今日、エクサルは研究室を訪れていた。

「……注射も初めてじゃないだろう。いちいち怯えるな。すぐ終わる」

:注射器を片手に持って椅子に腰かけ、ベッドの端に腰かけさせたセレニティスと向かい合う。セレニティスの腕には駆血帯が巻かれている。採血の真っ最中だった。


セレニティス

「ううう……」セレニティスはというと、エクサルが構えた注射針の先端を見てあからさまに怯えた表情。 

「だってそれ、ちくってするもの! わたし、それ嫌い!」などと子どものようにごねている。


エクサル

「我慢しろ。お前の健康を測るために必要なことだ」

「……終わったら菓子をやる。それで手を打て」


セレニティス

「うう……エクサルがそう言うなら我慢する……」表情は渋々ですが大人しくなりました


エクサル

「それでいい」大人しくなったセレニティスを見て、彼女の腕に刺す。手慣れた手つきではあるが、刺した瞬間の痛みはあるだろう。長くも思えるかもしれない数秒の時の後、針を抜く。採取した血は試験管に移す。

:彼女の血は、基幹世界人とは異なる水色だった。
「いつ見ても不思議なものだな」

:採血後の処置として、セレニティスの腕にテープを張る。終えてから、少しの間の後、彼女の頭を軽く叩いた。撫でる、未満の行為。

「終わったぞ


セレニティス

――ふぅ」安堵した顔。なんだかんだ言いつつも、エクサルのすることに関しては無意味ではないと信じている。だから我慢できるし、ちょっと頭をぽんっとされるだけでも、彼女にとってはすごく嬉しいことだ。

「えへへ、我慢できました!」


エクサル

「まあ。今日は、泣き言も少ない方だったな」

「検査の結果は、また後で知らせる。

 ……あまり、お前の世界の事を聞いたことがなかったが、お前たちの種族は皆、血はあの色なのか。というより、お前が“皆”といたかどうかさえ、聞いたことがなかったな」


セレニティス

「うん? わたしの世界の人たちは、みんなこの色だったわ?」と、試験管に移された水色の液体を見てなんでもなさそうに言う。 

「まあ、みんなって言っても、わたしが知っていたのなんて、集落にいた人たちくらいだけど……」その集落もせいぜい30人くらいだろうか。かつての世界についても、やはり同様に無知な様子だ。


エクサル

「そうか。私の、というより基幹世界人の血の色は赤い。だから、珍しく思える。こちらの世界の器具では調べてもわからないことがまだまだ多い」

:彼女の話を聞きながら一度席を立ち、ベッドサイドにテーブル寄せて、小皿に菓子を開ける。チョコチップクッキーだ。一方、それに添える飲み物はただの水、という味気無さだが。

「……。集落、と聞くと狭い世界に思えるが。お前のその好奇心旺盛さで、集落の外に出たことはなかったのか」問いかける内容を考える間があった。少し、探るように訊く。


セレニティス

集落から出ようなんて、思ったこともなかったわ。長老にダメだって言われてたし、生きていくには、周囲の自然さえあれば十分だったから」

:珍しくエクサルから質問されたことに少し戸惑っているが、素直に答える

(さりげなくクッキーをつまみ食いしています)


エクサル

……。なるほど」テーブルを指先で叩き、また少し間が開く。表情はさして変わらない、が悩むような様子がある
「この研究室に、自然はないが。それはお前にとって、不便はないのか」


セレニティス

「そうねぇ……確かに、森の香りや草木が恋しくなることはあるけれど」

「別に、不便ってほどじゃないわ。……今はエクサルもいるしね」


エクサル

「それなら、良い。自然から遠ざかっていることで不調を来すようなら、何かしら手段を考えなければならないところだ」水に入ったグラスを手に取り、一旦喉を潤す。後半の言は、無視を決め込んだ。


セレニティス

:悪戯っぽく笑ったかと思えば、エクサルの方に身を乗り出しました。 

「ねえねえ、わたしのお話はこれくらいにしましょうよ。

“もう滅んだ世界”のことより、今度はエクサルについて教えて!」目を爛々と輝かせています。


エクサル

:グラスを卓上に戻したところで、セレニティスの顔が迫る。

「私の事か。……基幹世界人。年は22歳。性別は男。フィロソフィア大学所属の研究者」これで満足か、と言いたげに見返す


セレニティス

「んもう! それは知ってるってば!」ぷんすこ 

「そうじゃなくて……もっとこう……“エクサル自身のこと”よ。情報だけじゃない、あなたのことを知りたいの」表情が真剣になります
「わたし、エクサルのこと……きっと全然知らないわ」


エクサル

「今のも私自身の事だろうに。別に知る必要もないだろう。
 ……と言いたいところではあるが。パートナーとの関係性が、ステラバトルにおいてどのような影響を齎すともしれない。互いの事を多少なり知っておくのは、必要なことか」

「……そうだな。お前に、私の願い――というより願いを抱く所以を、話したことはなかったか」


セレニティス

……ないわ。あなたの“願い”を、聞いたことはあるけれど


エクサル

:一つ頷く。

「とはいえ、どう話したものか。
 ……私には、研究者である父がいた。それと、母親と、妹。父は研究仲間に恵まれて、界隈では名の知れた人物だった。しかし、両親は今はいない。父が、母と、研究仲間に裏切りを受けたからだ」

:話す合間、表情と声音に変化はない。淡々としたものだ。

「母は姿を消した。父は、失意のうちに死んだ。残されたのは、妹と私の二人。しかし、その妹も、病に冒されている」

「私の研究は、妹の病の治療のためのものだ。
 とはいえ、望みは薄いだろうな。何年もかかっても、いまだ糸口すら掴めていない」

「だから、というと浅はかだろうが。救いのないこの世界など破壊されてしまえばよいと思った。それが願いの所以、……なのだろう


セレニティス

…………そうなのね」

「あなたは、妹を助けるために研究者になった。今も、わたしを研究しながら、治療法を探している」エクサルの話の内容を整理するように、ぽつぽつと。

「――素敵なことよ、エクサル。誰かを助けたいと願う心は」 

「そしてわたしは……“この世界があなたにとって良き世界で在れば良いのに”と願った」

「だから、わたしとあなたがステラナイトになったのは不思議なことじゃない。でしょう?」

:それは心からのほほえみ。


エクサル

「私にとっての“良き世界”が、お前にとっての"良き世界"だとは限らないだろう。……つくづく、お前は理解し難い」

「――が、」

「……セレニティス。お前が、私のパートナーであるというのなら。お前にとっても、良き世界となるだろう」

「そのくらいの願いを足しても、罰は当たるまい


セレニティス

「そうよ。“あなたが幸せになれる世界”が、“わたしにとって幸せな世界”なの」

「だいじょうぶ。わたしの愛で、あなたの願いを叶えてみせるわ」

:ふふっと笑って、彼女はエクサルの手を両手で優しく包んだ


エクサル

……私が口にしたのは、そういう意味では、……………いや。お前がそう思うのなら、それで良いことにしよう」緩やかに息を吐いて。

「お前の願いも背負い、私は剣を取ろう」

:彼女の手を拒まず、彼女を真っすぐに見返して、そう、誓った。