ルビィ・スプライト : 気が付けば、夜の屋上に立っていた。すべて消え去っていた。戦場も、ドレスも、手にしていた戦斧も。
ルビィ・スプライト : あの決闘は幻だったのか……そんな気さえ、する。
ルビィ・スプライト : 不意に、眩しい光が視界に入った。そういえば。
ルビィ・スプライト : 「見て!流星群よ」
ホルン : 変身が解けたホルンも、ルビィの声にはっとして顔を上げる。目の前に、美しい星空と、それを流れていく流星が光っていた。
ホルン : 「……わあ……本当だ」思わず、そう、感嘆の声を漏らして夜空に見入った。
ルビィ・スプライト : 「綺麗……」
ルビィ・スプライト : 流れ星は、星の騎士たちの勝利を祝福するかのように輝いていた。
ルビィ・スプライト : 瞬いては消えていく光をただ見ていた。
ルビィ・スプライト : 一瞬の光。歪んで、墜ちて、燃え尽きていったあの騎士のことを思い出したが、今は考えないようにした。
ルビィ・スプライト : 忘れようとしてパートナーの方を見る。星明かりに照らされて、ホルンの横顔はとても綺麗だった。
ルビィ・スプライト : 心なしか昨日までよりずっと、凛として見える。
ルビィ・スプライト : ホルンってまつげ長いよね……いつも男の子みたいな格好してるし、ちょっと王子様みたいかも……
ルビィ・スプライト : 気が付けば流星群そっちのけでじっくり見てしまっていた。
ホルン : 「……うん、本当に綺麗だね……」穏やかに微笑んで、ホルンは呟く。星空を見上げたまま、ルビィの視線には気付かずに。
ホルン : ふと、視線を感じる。そちらに目をやると、ルビィと目があった。
ホルン : そこで、はっとして思い出したように温かく笑う。
ホルン : 「お疲れ様、ルビィ。……やっぱり君は、希望そのものだったよ」
ルビィ・スプライト : 「あっ……う、うん、ありがと」目をそらしつつ。
ホルン : 目を逸らされたことに一瞬戸惑う。ホルンは不安そうにルビィを覗き込んだ。
ホルン : 「……ルビィ?大丈夫?……どこか、調子が悪いの?それとも、疲れてる……?」
ルビィ・スプライト : 調子が悪いのはおまえのせいだ。言えるわけがなかった。
ルビィ・スプライト : 「それよりホルンっていつも男の子みたいな服着てるよね!?」
ルビィ・スプライト : 「可愛い服も着るべきだと思うわ。今度の休み空いてる? 買いに行きましょう、私が選んであげるから!」
ホルン : 「えっ?あ、その、これは……こういう恰好の方が、少しでも強そう……に見えるかなと思って……」と微かにたじろぎつつ答える。
ホルン : 「この世界の可愛い服、は……その、ちょっと……僕には似合わないんじゃないかな……きっと、ルビィの方が何倍もかわいい服が似合うよ」少し困ったように微笑んだ。
ルビィ・スプライト : 「そんなことない。ホルンは可愛くて、かっこいいから似合う服もいっぱいあると思うわ」心からそう思った。たびたびドキドキさせられたんじゃかなわないという思いもあったけど。
ホルン : かっこいい、そう言われたことに驚く。だが、少しの間のあと、ふふっと口から笑い声が零れた。
ホルン : 「ありがとう、ルビィ。君がそう言ってくれて嬉しい。じゃあ……君さえ良ければ、一緒に服を選んでほしいな」
ホルン : 「でも」
ホルン : 「僕にとって、なによりも強くて、かっこよくて、かわいくて……大切なのは君だよ。この世界の誰も僕にとっての君を超えられない……君は、僕の光。僕の希望」そっとルビィの手を握る。
ホルン : 「斧を握る君も素敵だけど……こうして、ときどきでも、僕と……手をつないでくれたら嬉しい」控えめな、はにかんだような優しい笑みでそう言った。
ルビィ・スプライト : 「そうね……ときどきなら……つないであげてもいいわ」
ホルン : 「うん。……ありがとう」その言葉だけで十分だった。まだ、過去は拭い去れないけれど。この手を握ってくれる君がいるなら。
ルビィ・スプライト : しばしの沈黙。
ルビィ・スプライト : しばらくして――
ルビィ・スプライト : 「……ねぇ、私たち守り切ったのよね。二人で過ごすこの世界を」
ホルン : 「うん、そうだよ。君が、この手で守ったんだ」
ルビィ・スプライト : 幻なんかじゃない。あの戦いで守り切ったものは、確かに手のなかにある。
ルビィ・スプライト : 「もっと強くならなくちゃね。もっと高く遠くへ行くんだから、私たち二人で……」
ルビィ・スプライト : 戦いはこれからも続いていくだろう。
-fin-
希望のブリンガー:ルビィ・スプライト
絶望のシース:ホルン
赤ペア、おつかれさまでした💐