幕間~赤&薄緑~


【赤色のアネモネ】

ルビィ・スプライト

:アーセルトレイ公立大学付属高等学校、屋上への階段。

:上っていくのは二人の少女。立ち入り禁止の札を無視して赤の少女は進んでいく。青の少女の手を引いて。

「変身するならやっぱりこの場所よね~」 


ホルン

「こ、ここって立ち入り禁止なんじゃ……」と少しおろおろするホルン。だが、握られた掌の温度に安堵を感じる


ルビィ・スプライト

「いいのいいの、この学校もいずれ私たちのものになるんだから」 


ホルン

「でも……そうだね。ルビィがそういうならここが相応しいよ」と微笑む


ルビィ・スプライト

:扉を開けて屋上に出る。アーセルトレイの学校施設はほとんど第一層にある。もう少し暗くなれば、きっと星が良く見えるだろう。

:今夜の流星群を眺めるには絶好のスポットだ。だが、今はなすべきことがある。

少し冷えた空気を吸い込んで、

「いざステラバトルってなるとさすがに緊張してくるわね……」

:今まで武器を持って戦ったことなんてない。しかも相手はいくらかはバトルを潜り抜けてきたエクリプス、つまり元ステラナイトだ。果たして自分が勝てる相手だろうか?


ホルン

:珍しく緊張した顔つきのルビィを見て、ホルンは一瞬驚く。

:だが、きゅっとルビィの手を握り返し、正面から彼女を見た。

「大丈夫だよ、ルビィ。君なら、立ち向かえる。……僕が」一度言葉を区切り、微笑んだ。

「僕が、君の力になってみせる」


ルビィ・スプライト

:一瞬はっとした表情になる。そうだ、私は一人じゃないのだから。

:いつもの強気な表情になり、まっすぐ見つめ返す。

「ホルン、あんたの力、貸してもらうわね」


ホルン

:ホルンは頷く。

「君の強さも、僕の弱さも……そのすべてを力に変えよう。僕たちの心に宿る想いを――星の騎士の、力に変えるんだ」

:強くルビィの手を握り、ホルンは言った。


ルビィ・スプライト

:強く握り返した手を、空に掲げる。

「私と一緒に戦って、ホルン。二人なら必ず勝てる!


ホルン

「もちろんだよ、ルビィ。2人なら……どんな未来だってつかみ取れる!」ホルンは、ルビィに応えるように力強く言った。


ルビィ&ホルン

『激情を刃に変えて――フィール・マイ・ブレイド!』


ルビィ・スプライト

:瞬間、シースは光となり、深紅のドレスに変わる。

:ブリンガーの胸元に青色の宝石……

:そして手には優美な長剣……ではなくどこか無骨さを感じさせる長柄の斧。

:おかしい。打ち合わせと違う気がする……ていうか、絶対違うわ。

「……ま、このほうが私らしいかもね」

:微笑んで、斧を握り直す。

 

「さて、エクリプスをぶちのめしに行くわよ。私たちの世界を守るために!

 

 



【薄緑色のシロツメクサ】

ガルテリオ

:暮れていく空。
:輝き始めた星のもと、四葉を見つけた小高い丘の上で、ガルテリオとさつきは空を見上げていた。

「……まだ、流星群には少し早いみたいだな。まあ、願いの決闘場でどのみち見ることになる……じゃあ、それで良い」ガルテリオがふう、と息をついて小さく笑う。


東原さつき

「まー、戦闘中は落ち着いて見られないだろうから、その後かな。けっこう長く続くみたいだし」

夜の街を眺めながら、さつきは言う。当たり前だけど、昨日訪れた時とは少し違う景色だ。


ガルテリオ

「ああ、そうだな。じゃあ、ちゃんと『お前と並んで』流星群が見れるように戦いには勝たねえと。……さつき」

:ガルテリオがさつきを呼ぶ。


東原さつき

「ステラバトル中の流星群も賑やかでいいかもしれないけど、やっぱ、ね。……ん?」


ガルテリオ

「手を出してくれ」彼は少しいたずらっぽい笑みでそう言った。 

「グーじゃなくてパーな」


東原さつき

「……ん、うん」

:危うく握りこぶしを作りそうになって、慌てて手のひらを差し出す


ガルテリオ

「素直でよろしい!」若干さつきの口ぶりをまねて、ガルテリオは明るく笑う。そして、差し出された手のひらに何かを握らせた。 

:それは、昨日見つけた四葉をキーホルダーに加工したものだった。 

「……お守り、なんて今まで意識したこともなかったが。そいつはお前にいつも四葉探しを手伝ってもらってた礼だ」 


東原さつき

「……え」

:手のひらの中の"お守り"を見て、さつきは一瞬言葉を失った。 

:それは、彼が私のためにこれを用意してくれたことへの驚きと感謝――も、もちろんあったけれど。 

「………ふふ、あはは!」感謝を口にする前に、思わず笑いが漏れてしまう。 

:差し出した手とは別の、もう片方の手を自分の上着のポケットに入れて……取り出したのは、ほとんど似たような四つ葉のキーホルダーだった。 

「んふふふ……じゃ、これ、私からね」 


ガルテリオ

:しばし驚き、呆気にとられているガルテリオ。さつきから渡された四葉のキーホルダーを見て、彼も笑った。 

「ふっ……はっはっは! 俺もお前もおんなじこと考えてたってわけだ!」

:ひとしきり彼とさつきは笑いあった。 

「……じゃあ、余計に負けるわけにはいかねえな」彼は上着の胸ポケットにもらったキーホルダーをしまいながら静かに笑う。 

:まっすぐにさつきを見つめ、拳を突き出す。幾度となく繰り返した『信頼の証』。

「俺たちは負けない。何があっても、この手で道を切り開く」 

「さつき。――行こう、俺たちの戦場へ」彼は真剣なまなざしでさつきを見つめた


東原さつき

:そっと、突き出された拳に拳を重ねる。

:もう彼の頬を殴る必要はない。これだけで、二人は通じ合える。 

「絶対に勝てる……君と一緒なら。もう挫ける必要なんてない……私たちは、負けない」 

:目を閉じて、ひと呼吸。

:そして、ガルテリオをまっすぐに見据えて――。

『欲するものはただ1つ、すべてを凌駕する絶対的な力!』


ガルテリオ

:彼もさつきをまっすぐに見つめ返す。お互いの瞳の奥に、希望が、絶望が、それ以上の強い意志が見える。 

:お前となら、どんな戦場だろうと……!

『さらなる高みへと至るため、ともに戦場を駆け抜けよう!』

:ガルテリオとさつきを中心に風が吹きあがる。ふっと微笑んだ彼女が光の粒子となって姿を変えていく。

:伸ばされた彼の手元に現れたのは、光を受けて輝く白銀の刃――ガルテリオとさつきの決意を宿した、大きな曲刀だ。 

:元より戦いに適した彼の服装に大きな変化はない。防具も装飾もなく、ただ服の色だけが曲刀に合わせるように黒から白へと変わっていった。 

:願いを勝ち取るために必要なのは、この身1つと、手にした刃のみだ。 

:ガルテリオは、服越しに胸元のポケットに入れたお守りに触れる。そして、そのあと曲刀の刃に指を添わせると決意を込めた眼差しで言った。

「――必ず手に入れてみせる。俺たちの、勝利を。行く手を阻むものは、……全て捻じ伏せる!」 

:勇敢にして冷徹なる星の騎士は、願いのために剣をとり、力をもって勝利を掴む。その刃は躊躇いなく、容赦なく、戦場を切り開いていくだろう。 

:そして、覚えのある浮遊感と眩い光とともに、彼は女神の召喚に応じるのだった――自分たちの手で、戦場を切り開くために。